歯科コラム

インプラントの骨造成とは?

2018年09月30日 (日)
インプラント治療を成功へと導くには、顎の骨が正常な状態でなければなりません。それだけに、インプラントの事前診断においては、歯科用CTを活用した精密検査も実施され、患者さんの顎の状態を細かく診ていくのです。そこでもし、異常が見つかった場合は、インプラント体を埋入する前に、骨造成などの処置が必要となります。ここではそんな骨造成の仕組みやリスク、治療に伴う痛みなどについて詳しく解説します。

インプラント治療の骨造成ってなに?

インプラント治療の骨造成ってなに?
骨造成とは文字通り、骨を造成する処置法で、主にインプラントや重度の歯周病の治療で行われます。例えば、インプラント治療を開始する前には、歯科用CTなどを活用して、患者さんの骨の状態を正確に把握します。具体的には、骨の幅や奥行き、深さはもちろんのこと、骨密度まで調べ上げます。その結果、インプラント体を埋入するだけの骨質が確保されているかを評価し、もしも骨量が不足しているようなことがあれば、骨造成の適用となるのです。ですから、インプラント治療における骨造成というのは、あくまで人工歯根であるインプラント体を埋め込めるかどうかを指標に、骨造成を適用されるか決めることとなります。

骨造成の仕組みについて

骨造成では、骨量が不足している部分に、人工骨や自家骨を移植して、骨が再生するよう促します。その際、単に骨のみを移植するのではなく、骨を再生する細胞が活性化する因子も同時に作用させます。その結果、骨密度が低かったり、骨の量が物理的に不足していたりする部位に、骨の再生が起こることとなります。ちなみに、骨造成で最も一般的に行われている処置法に、GBR法があります。このGBR法によって骨造成をはかった場合は、およそ3~6ヶ月程度で、インプラント体を埋入することができる骨の状態へと回復できます。

骨造成に伴うリスク

インプラントでは、骨量や骨密度が足りない症例において、治療そのものを適用できないケースが珍しくありませんが、骨造成を行うことによってインプラントも治療の選択肢の中に入れることが可能です。それだけに、顎骨に問題がある方は骨造成を希望される場合が多いですが、そこで気になるのが処置に伴うリスクです。

骨造成は、基本的にインプラントの埋入手術と同じような外科処置が必要となりますので、治療の際には歯茎を切開したり、汚染された歯槽骨や歯肉を切除したりすることもあります。これはいわゆる観血的処置と呼ばれるもので、当然のことながら出血を伴います。そのため、術中の管理や術後のケアが不適切であると、細菌感染を引き起こすリスクが生じます。もしも、インプラントを埋入予定の顎骨に細菌感染が生じ、歯槽骨の吸収などが亢進すると、そもそもインプラント治療が不可能となるだけでなく、その他の歯にも悪影響を及ぼすリスクも出てきます。

ちなみに、インプラント治療における骨造成は、必ずしも1回で処置が完了するというわけではありません。患者さんの骨の状態や再生の進み具合によっては、2~3回の処置が必要となることも珍しくないのです。そうして手術をする回数が増えれば増えるほど、細菌感染のリスクも上昇するといえます。ただ、適切な方法で骨造成の処置が行われていれば、基本的にそうした偶発症が生じることはありません。

骨造成に伴う痛み

骨造成に伴う痛み
歯科治療には、痛みがつきものです。とくに歯茎を切開するような観血的処置においては、強い痛みを伴いそうで不安ですよね。確かに、骨造成においても、親知らずの抜歯に近い痛みを感じることもありますが、それは治療が終わった後の話です。なぜなら、骨造成の処置中には、麻酔がしっかりと効いていますので、激痛に耐えながら処置を受けるということはまずありません。ただ、治療が終わって麻酔が切れた後には、それなりの痛みが発生することがあります。

とはいえ、一般的な親知らずの抜歯と同様、治療の後には歯医者が鎮痛剤などを処方してくれますので、適宜服用することで痛みを抑えることが可能です。ただし、鎮痛剤でも抑えられないような痛みが生じている場合は、すぐに骨造成を受けた歯科医院を受診しましょう。それほど強い痛みが生じるということは、処置を施した部分に細菌感染などを引き起こしている可能性が考えられますので、応急処置が必要となります。

まとめ

このように、インプラント治療では骨が不足している症例で骨造成が行われることがあります。骨密度や骨幅、骨の深さなどが足りていない部分に自家骨や人工骨などを移植して、骨の再生を促します。骨造成は、歯肉を切開するなどの外科処置を必要とするため、感染症へのリスクが高まりますが、適切な方法で施術されていれば、問題なく骨が再生されていきます。痛みに関しても、術中は麻酔が効いていますし、術後も鎮痛剤によって症状を緩和させることができるため、それほど心配する必要もありません。そんな骨造成の仕組みを理解しておくことで、いざ施術を受けることになっても、戸惑うこともなくなるかと思います。