歯科コラム

オールオン4でトラブルを起こさないためにしておきたい普段のケア方法

2018年09月9日 (日)
インプラント治療は、インプラント体と上部構造を装着したらそれで終わりというわけではありません。その後の定期検診やご自宅でのセルフケアをきちんと行うことではじめて、長く使い続けることができるからです。それはオールオン4においても同じです。ここではそんなオールオン4でトラブルを起こさないためのケア方法について詳しく解説します。

使用する清掃器具

使用する清掃器具
オールオン4の上部構造は、基本的に総入れ歯とほぼ同じです。人工歯と人工歯肉の部分からなり、すべてが一体化しています。ですから、取り外したあとのケアは比較的容易です。まず、必要な清掃器具は、歯ブラシ、ワンタフトブラシ、デンタルフロス、歯間ブラシなどで、通常の歯磨きと大差はありません。気を付けなければならない点は、歯磨き粉です。

一般的には、フッ素が配合された歯磨き粉を選んで歯の再石灰化を期待するかと思いますが、オールオン4の上部構造には天然歯は存在していません。むしろ、インプラントと連結する部分に金属が使われていますので、フッ素が悪影響を及ぼす可能性があります。また、研磨剤が配合された歯磨き粉も避けるようにしましょう。研磨剤は、歯面の汚れを効率的に落とす上で非常に有用な成分ですが、オールオン4の上部構造に使用してしまうと、人工歯や人工歯肉の部分を傷つけるおそれがあるのです。

オールオン4の清掃方法

オールオン4では、上述した通り至ってシンプルな清掃器具を使って、セルフケアを行っていきます。歯ブラシに関しては「かため」ではなく「ふつう」か「やわらかめ」を使い、1本1本の人工歯をやさしく丁寧に磨いていきましょう。むやみにゴシゴシと強く磨いてしまうと、人工歯が傷ついてしまいますので要注意です。人工歯の表面に傷がつくと、プラークがたまりやすくなり、虫歯や歯周病のリスクを上昇させます。

ワンタフトブラシは、歯と歯茎の間の部分など、細かい操作が必要な部位に有効な清掃器具です。毛の束がひとつしかないので、通常の歯ブラシでは取り除くことが難しい部位を効率的に磨くことができます。デンタルフロスや歯間ブラシは、歯と歯茎の間や歯と歯の間の磨きにくい部位に活用します。これもまた、通常のオーラルケアと大きな違いはありません。

上部構造ではなく、顎の骨に埋まっているインプラント体の方は、ジェット水流洗口器や音波歯ブラシによる清掃が有効です。もちろん、これらの器具はオールオン4の上部構造に関しても活用することができます。

不十分なケアで起こり得るトラブル

不十分なケアで起こり得るトラブル
インプラント治療のオールオン4では、ケアやメンテナンスが不十分だと「インプラント周囲炎」という病気を引き起こすことがあります。インプラント周囲炎とは、その名の通りインプラントの周りに炎症が生じる病気で、歯周病の一種とお考えください。これは、インプラントの上部構造やインプラント体、あるいはアバットメントなどにプラークがたまり、歯周病菌が増殖することで発症します。インプラント周囲炎も一般的な歯周病と同じように、病態が悪化していくと歯肉だけでなく歯槽骨まで吸収します。これは、インプラント治療において最も避けなければならない事態です。なぜなら、人工歯根であるインプラント体は、顎の骨と結合することで固定されているため、歯槽骨の吸収はそのままインプラント体の脱落へとつながるからです。そういった理由から、上部構造およびインプラント体というのは常に清潔な状態を保つ必要があるといえます。

オールオン4のケアが不十分な場合起こり得るその他のトラブルとしては、上部構造やインプラント体の不具合が考えられます。例えば、上部構造を清掃する器具に不適切なものを使用すると、人工歯や人工歯肉に損傷や変形をもたらすことがありますので要注意です。また、不潔な状態の上部構造を使い続けると、歯周病菌だけでなく、その他の口腔内細菌も繁殖しやすくなるため、いろいろな感染症へのリスクも高まりますのでご注意ください。とくに誤嚥性肺炎などの呼吸器疾患は要注意です。

歯科医院でのメンテナンスも欠かせない

ここまで、オールオン4に関するセルフケアの重要性と実践方法を解説してきましたが、同時に、歯科医院でのメンテナンスも欠かすことはできません。歯科医院では、歯医者にしかできない方法で、インプラント体やアバットメントの清掃を行ってくれます。そういった歯医者によるメンテナンスも併用することで、インプラントの寿命は確実に延長します。

まとめ

このように、インプラントのオールオン4では、患者さん自身が自宅で行う歯磨きが何より重要となります。また、歯科医院でのメンテナンスも欠かすことはできませんので、インプラントによるトラブルを未然に防ぐためには、セルフケアとプロフェッショナルケアの両方をしっかりと実践していきましょう。せっかく、お金と時間をかけて入れたインプラントですから、できるだけ長く使い続けていきましょう。