歯科コラム

インプラントってすぐできる?前準備の手術が必要になることがあります

2018年08月31日 (金)
虫歯や歯周病の治療というのは、お口の中を確認し、レントゲン撮影などを行ったらすぐ開始できます。それが一般的な歯科治療ですが、インプラントは少し異なります。なぜなら、インプラント手術を行うにあたって、いろいろと前準備が必要となることが多いからです。具体的にインプラントを行う場合は、どのような前準備が必要になるのでしょうか。ここでは、そんなインプラント手術における前準備について、詳しく解説します。

どうして前準備が必要になるの?

どうして前準備が必要になるの?
虫歯治療は、歯を削ってレジンを詰め、歯周病治療では歯石を除去します。これは、とてもシンプルな処置法ですよね。一方、インプラント治療では必ずといって良いほど、手術が必要になります。このインプラント手術では、術野を見やすくするために歯肉切開を行い、顎の骨に専用のドリルで穴を開けて、チタン製の人工歯根を埋め込むことが一般的です。つまり、人工物を体の中に埋め込む歯科治療になります。それだけに、前もっていろいろな準備が必要となるのです。

骨量と骨密度が大切

インプラントは顎の骨に、土台となるチタン製の人工歯根を埋め込みますので、顎の骨がしっかりとしていなければなりません。なぜなら、骨量と骨密度が適正でなければ、インプラント体を埋め込んでも土台としての役割を果たすことができないからです。もしも、顎の骨が不足している状態でインプラント体を埋め込んだら、インプラントと骨とがしっかりと結合せず、結局は抜け落ちてしまうこととなります。

顎の骨を増やすための前準備

骨量と骨密度が不足している患者さんの場合は、インプラント手術に先立って、GBRなどの骨誘導再生を行うことがあります。これは、土台となるインプラントをしっかりと骨に支えてもらうための処置です。そのため、時間をかけてじっくりと行います。そうして骨を増やすことで、インプラント手術を行える下地を整えます。

歯を支えているのは骨だけじゃない?

歯を支えているのは骨だけじゃない?
私たちの歯は、歯槽骨と呼ばれる顎の骨に埋まっています。そのため、歯を支えているのは主に歯槽骨といえるでしょう。けれども、そのほかにも歯肉や歯根膜という重要な歯周組織も存在しています。インプラント手術では、そうした歯肉などの歯周組織も事前に良い状態へと整えておくことがあるのです。これも一種の土台づくりといえます。例えば、顎の骨はしっかりしていて、インプラントもきちんと埋め込むことができたとしましょう。けれども、インプラントの周りにある歯肉が吸収されていたらどうなるでしょうか。見た目が悪くなることはもちろんのこと、インプラントが外部からの刺激を直接受けるなどしてしまいますので、やがてはダメージがたまっていきます。すると、インプラントの寿命が縮まり、早い段階で抜け落ちることも考えられるのです。

歯肉や歯根膜を再生するGTR

GTRという処置は、骨誘導再生とほぼ同じものですが、歯根膜や歯肉などの再生も目的としています。メンブレンと呼ばれる特別な膜を使って、歯根膜や歯肉、そして歯槽骨の再生を促しているのです。これをインプラント手術前や後の行うことで、インプラントの状態も良くなります。

上の顎にインプラントを埋め込むときは要注意

インプラントは、埋め込む場所によっても、必要となる前準備が変わってきます。とりわけ、上の顎にインプラントを埋入する場合は、上顎洞という空洞との位置関係に注意することが必要です。というのも、私たちの上顎のすぐ上には、上顎洞と呼ばれる空洞が存在していて、インプラント手術を誤ると、その空洞へとインプラント体が突き出してしまうからです。そうした偶発事故が生じると、上顎洞炎などの重たい病気を発症することとなりますので注意が必要になります。

上顎洞挙上術で上顎の骨を造成する

上顎洞挙上術で上顎の骨を造成する
上顎の骨が不足していると、インプラント手術の際にチタン製の人工歯根が上顎洞へと突き出てしまいますので、前もって上顎洞挙上術を実施することがあります。これは厚みの足りない上顎に対して、骨を移植し、再生も誘導することで骨造成をはかる処置法です。具体的には、サイナスリフトやソケットリフトといった処置法が適用され、インプラント歯科では日常的に行われている前準備といえるでしょう。そのため、歯医者の中でもインプラント治療を得意としている人は、これまで何度も経験している処置法です。

虫歯や歯周病は事前に治す

インプラント治療を始めるにあたって、口腔内に虫歯や歯周病などの異常がある場合は、先にそちらの治療を優先します。これもまたインプラント手術に先立った前準備と捉えることができるでしょう。

まとめ

このように、インプラント手術を行うにあたって、歯肉や歯槽骨といった歯周組織を適切な状態へと整える前準備は必要不可欠な処置です。なぜなら、そうすることで初めて、インプラント治療の土台となるチタン製の人工歯根を埋め込むことができるからです。また、虫歯や歯周病などの口腔疾患もきれいに治しておくことも忘れてはいけません。インプラント手術を行う段階では、できるだけ失敗へと導く要因は取り除いておいたほうが無難です。インプラントを行うとひとくちに言っても、患者さまの口内環境は千差万別といえます。事前にしっかりと口内にあわせた準備を行い、安心してインプラントが行えるように整えておきましょう。