歯科コラム

金属アレルギーでもインプラントはできるの?

2018年05月3日 (木)
歯を失ってしまった場合、ブリッジ、入れ歯、インプラントなどの選択肢があります。インプラントは、自分の歯のように硬い食べ物でも噛むことができ、残っている他の歯を傷つけることがない治療法なので、選択する人も多いのではないでしょうか。
しかし、今まで金属アレルギーを起こしたことがある人は、「大丈夫かな?」と心配になりますよね。インプラントは顎の骨に金属の人工歯根を埋め込む必要があるからです。
そこで今回は、金属アレルギーの人でもインプラントはできるのかについて、詳しく紹介いたします。

そもそも金属アレルギーはなんで起こるの?

そもそも金属アレルギーはなんで起こるの?
私たちの周りには、たくさんの金属があります。金属というと、装飾品のネックレスやイヤリング、身に着けるメガネなどが思い浮かびます。しかし、直接この金属が金属アレルギーを引き起こすわけではありません。金属を身に着けていることによって、汗や体液が金属をイオン化して溶かしてしまうからなのです。そして、金属がイオン化したものが、皮膚の粘膜で免疫細胞が過剰に反応して、異物とみなしてしまうことで、金属アレルギーの症状がでてくるのです。
金属アレルギーの症状は、蕁麻疹、接触皮膚炎、口内炎、口唇炎、舌炎があります。
その他にも、頭痛やめまい、肩こり、疲労、物忘れが増える、花粉症などのアレルギー症状も金属アレルギーが原因となることもあるのです。
食品にも、意外と多くの金属が含まれています。金属の含まれた食品を食べることによって、金属アレルギーの症状が出てしまうのです。
こうなると、原因の金属を特定するのはなかなか難しくなってきますよね。

インプラントの金属もアレルギーになることはある?

インプラントの治療は、顎の骨に金属の人工歯根を埋め込んで治療します。金属を使った治療ということになります。インプラントで使う金属はチタンです。
チタンというと、ゴルフのチタンドライバー、眼鏡のフレームなどにも使われている金属ですよね。
チタンはそんなに珍しい金属ではなく、人間の体にも植物にもごくわずかですが存在しています。地球上だけではなく、月の石や隕石にも含まれているのです。
そんなチタンですが、とても優れた性質を持つ金属です。
チタンは、プラチナと同じ強い耐食性があり、常温常圧では酸や塩分にもほとんど反応しないので、錆びないという特徴があります。鋼鉄と同じくらい強さがありますが、重さは鋼鉄の45パーセントという軽い金属です。軽い金属で知られるアルミニウムと比べても、チタンはその60パーセントの重さで、強度は2倍もあるのです。その上、金属疲労もしにくいのです。
ということは、チタンは軽くてじょうぶで変化しにくく、汗などにも強いので体との相性が抜群ということになります。
整形外科では、昔からチタンの人工関節を使っています。人間の体の中に入れても、金属アレルギーなどの拒否反応が出ません。金属がイオン化して溶けだす心配がないので、身体へ害を与えない安全な金属なのです。

金属アレルギーの対処法はあるの?

金属アレルギーの対処法はあるの?
「インプラントに使うチタンがどんなに安全だといわれても、顎の骨に埋め込んで長い間体の中に存在することになるので心配」という人は、金属アレルギーの検査をしてみてはいかがでしょうか。
アレルギー検査は、アレルギーを起こす原因となる物を特定することができます。
アレルギー検査は、パッチテストと呼ばれる検査を行います。試薬のついたテープを目立たない背中に貼ります。まずは2日間貼り、2日経ってから剥がして皮膚にあらわれる反応をみます。その後、3日後、7日後と確認して皮膚の反応を確認していく方法です。
一定の期間が経過すると、どの金属にアレルギー反応があるのかが分かるのです。ここでアレルギー反応がなければ、その金属ではアレルギー反応が起きないということが分かるのです。
また、血液検査をしてアレルギー反応を調べる方法もあります。

インプラントは何でチタンを使うの?

昔から失った歯の代わりに人工歯をいれる方法はありましたが、各種金属やセラミックを使って試みていました。しかし、どの材料も骨としっかり結合できなかったので、最終的には人口歯が抜け落ちていたのです。体が異物と認識してしまい、拒絶反応を起こしてしまうからなのです。
インプラントの人工歯根であるチタンと骨が結合することを発見したのは、スウェーデンのブローネマルク博士です。
博士は骨の治癒を研究しており、たまたま生きたウサギの顎骨にチタンの顕微鏡を埋め込みました。その時にチタンを使ったのは、生体に馴染みやすい性質があったからです。実験が終わり、チタンの顕微鏡を外そうと思ったら、外れなくなっていたのです。よく見ると顎の骨とチタンが密着していて、ほとんど同化していたのです。そこから歯医者の人工歯根にチタンを用いるインプラント治療が考え出されました。
チタンは、それほど体に馴染む、体にとって安全な金属といえるのです。