歯科コラム

インプラントと天然歯をつなぐブリッジは可能?

2018年01月31日 (水)
歯を失ってしまった場合に人工の歯で失った歯を補う治療は複数あります。もし、あなたが複数本の連続した歯を失ってしまった場合、どういった治療を選択すべきでしょうか。ひょっとしたら「インプラントとブリッジを合わせて」という結論に至った人もいるのではないかと思います。では、歯医者ではそんな方法が利用できるのでしょうか?

ブリッジ治療とは?

ブリッジ治療とは?
まずは、人工歯で補う方法の一つである「ブリッジ治療」について簡単に説明しておきます。ブリッジ治療は、失った歯の両隣の歯を削って土台にする方法です。1本の歯を補う場合において、その両隣の歯を削って、3つくっついた人工歯を削った歯に橋のように被せる方法です。部分入れ歯と比較して余計なパーツが無いのですが、健康な歯であっても削らなければならないというデメリットがあります。

インプラントと天然歯をつなぐブリッジとは?

同じく人工歯で補う方法である「インプラント」と天然歯をつなぐブリッジですが、理論上は十分に可能です。ただし、さまざまな問題があるということは十分に理解して実行しなければなりません。
そもそも「インプラントと天然歯をつなぐブリッジ」というものがどんなものであるのか簡単に説明します。患者さんは、2本の連続した歯を失っているとします。その片方をインプラントで、もう片方をブリッジで補うという方法になります。つまり「天◯◯天」という歯並びにおいて、「天イブ天」というような形で補います。ブリッジの右隣の歯は削ってブリッジの土台にし、インプラントから右側の天然歯までの3本分のブリッジを被せるという方法なのです。

この方法のメリットとは?

この方法で失った歯を補うことのメリットですが、インプラントの本数を減らすことが大きな目的になると思います。インプラントの本数を減らすことで、費用と手術の負担を抑えて治療を受けられます。
仮に2本ともインプラントで補うとします。インプラントは1本につき30万円~40万円の費用がかかります。単純に考えて、1本の時の2倍の費用がかかる計算になります。少しでも費用を抑えたい場合、インプラントの本数を減らすか、インプラントそのものを諦めなければならなくなります。
また、インプラントには手術が必要になります。2本ともインプラントにするのであればその分だけ歯茎の切開や骨に穴を開ける手術を必要とします。本数が少なければ、手術の時間や回数を減らすことができます。
つまりインプラントと天然歯のブリッジは、インプラント治療のデメリットを最小限に抑えて、失ってしまった2本の歯を補える方法というわけなのです。

インプラントと天然歯は違う

インプラントと天然歯は違う
この方法を採用する根幹には「インプラント≒天然歯」という構図があると思います。確かにインプラントはしっかりとした固定方法なので食事や発音の違和感が少ないのですが、天然歯を全く同じ構造というわけではありません。
ここで問題になるのは「歯根膜」という組織です。これには、かみ合わせの力を逃がすという役割があります。かみ合わせに際して、歯根膜によって歯は上下左右に少しだけ動くことができます。この構造が噛み合わせの際の「噛む力」を分散させて、歯の周囲の骨に衝撃が伝わるのを阻止しています。
インプラントの場合、歯根膜やそれに相当する組織は備わっていません。つまり、かみ合わせの時にインプラントが上下左右に動くことがないので、人工歯の部分で噛む力の衝撃を吸収させる必要があるのです。

かみ合わせの調整が必要になる

ブリッジの土台となる天然歯とインプラントでかみ合わせの負担のかかり方が異なる以上、ブリッジ治療に際してはそれを考慮して調整しなければなりません。ですが、完璧に調整できるとは限りません。
かみ合わせに何らかの問題が生じた場合、調整した部分にも影響することになります。往々にして、歯根膜が無いインプラントの人工歯のほうが多くの負担を背負うことになります。ブリッジの歯でかかる力が均一で無い以上、アンバランスな負荷のかかり方によって人工歯や土台になっている削られた天然歯に悪影響を及ぼすリスクが高いです。
それを回避する方法としては、定期的な歯医者でのメンテナンスが重要になります。このような特殊な状況においては、かなり短い間隔で通院しなければならない可能性が高いです。こまめにメンテナンスを行わないと、いつブリッジや天然歯、インプラントに問題が生じるかわからないのです。
そうなると、せっかくインプラントを減らして費用を抑えたのに、メンテンス費用が高くつくケースも出てくると思います。患者さんごとにさまざまな事情がありますので一概には言えませんが、あまり賢い方法とは言い難いです。費用面に不安・問題があれば、そのことを歯科医師に相談してみてください。もっと患者さんに合った、より希望に合致する治療方針を探してくれることでしょう。